タネまきが楽しくなる本②―『たねの森2009』

 『捨てるな、うまいタネ』を読み終えたころ、タネまきが楽しくなる情報が我が家に届きました。紙英三郎・愛夫妻が経営する「無農薬・無化学肥料のたねの店 たねの森」の2009種子カタログです。昨年までは横長の変型版でしたが、今年はA4版で使いやすくなりました。
 紙さんご夫妻は、日高市清流の空き農家と農地を借りて6年目、インターネットでのタネの販売をしながら畑と田んぼを耕し、地域に溶け込んだ生活を送っています。また、農園でたねの自家採取を行い、無農薬・無化学肥料のたねの商品を着々と増やしていて、同じ志の農業を目的とする私たちにとっては非常に心強い味方です。
 全部で128品目、すべてが農薬と化学肥料がが使われていない農場で栽培された固定種です。たねのことを多少でも知っているならば、このことがどんなに素晴らしいことであるか、わかると思います。

 現在ホームセンターなどで売られているたねは、ほとんどが外国の農場で農薬と化学肥料を使って大量生産されたものです。袋に記載されている生産国をみると、世界各地に生産が広がっていることがわかります。
 一般市販品だけではありません。プロの農家が播くたねも同じです。たねの中にはひげやとげをもっているものもあります。種の生存維持・拡散のために自然の仕組みとしてあるものですが、最近はたねを撒くときの時間や生産性のために、たね自体を薬剤でコーティングしてしまう例も多くなってきました。たね撒き機の穴をスムースに通らせるためです。
 このようにたねは、人為の衣を着せられ、風土の力と本来の生命力を失ってきているのです。それは、人間が自然のなかでの生命力をうしないつつあることと軌を一にしています。
 さらに、一般に市販されているたねは、F1品種と称されるものです。
 「異なる固定種を掛け合わせた子ども、すなわち第一世代という意味のF1である。この雑種第一世代は、一般に元気がよく、たくさんとれて病気に強いなど、親より優れた性質が出てくる雑種強勢という現象が起こる。……(中略)……だが、そこに一つ落とし穴がある。それは、このF1品種から種子を採ってそのタネをまくと元のF1品種と同じものは生えてこないという点である。……だから、種苗会社から毎年種子を買い続けなければ同じF1品種を育てることはできない」
 これは、昨日の記事で紹介した『捨てるな、うまいタネ』から引用した説明です。たねの森のたねは、全部、F1ではない固定種ですから、自分でたねを採取してまいても毎年同じものがとれる、つまり自給が可能となるわけです。皆がそうしたら、たね屋は商売上がったり、になってしまうんでは? 紙さん曰く「それが理想でそうなったら皆でたねを持ち寄って交換すればいいです」と。自給循環農業の理想です。
 このような理想のもとに収集されたたねが128品目、「2009種子カタログ」はレイアウトも美しく、見ているだけであれもこれも撒きたくなります。ていねいに播いて大事に育てておいしさを味わって、そして来年のためにたねをとる――自給・安全・健康農業をしたい人に最適です。ぜひ撒いてみてください。

 たねの森
 日高市清流117
 電話:042-982-5023 FAX:020-4669-0427
 メール:innfo@tanenomori.org http://tanenomori.org/