地域メディア

 地域にメディアがあることは、その地域にとっては有難いことです.
 日本や世界のニュースは飽き飽きするほど飛び交っていますが、地域のニュースはほとんど無いと言っていいくらいです。だから自分の見聞と口コミの狭い範囲になってしまい、住んでいるとは言っても、ただ身を置いているだけという状態です。
 地理・地形・自然は足で歩いてみれば分かるが、市政や議会のこととなったら、もう皆目わかりません。市のHPを覗いてみても形はおぼろげに分かるが、本当の姿は何だか霧に包まれている感じです。もっとも、約40年日高市に住み、結構、見聞している私でも霧がかかっていると感じる方面はあり、“地元”のことはわかりません。
 そこで、霧が晴れるまでにはいかないが、地域の新聞やケーブルTVは、地域のひだに分け入る情報源です。特に政治・経済のニュースを知るには欠かせません。
 日高・飯能地域の地域新聞と言えば文化新聞です。私はもう長いこと読者で情報源として重宝しています。中央紙でもそうですが、新聞記事に満足することはありませんから、文化新聞の記事も“いろいろ”です。日高市飯能市の市政を手際よく整理して報じてくれるのは、それだけでも有難い。
 市政の記事を書くことについてはいろいろな制約があり、発行元の特徴もあるから、そこは無い物ねだりを言っても仕方がない。しかし、そこは新聞である、報道の精神を発揮してほしい、と影ながら声援を送っているのです。元気な新聞は地域に欠かせない存在だからです。
 最近気になる記事がありました。
 埼玉県は、現在、岩手県の災害廃棄物を受け入れて、県下4カ所にある太平洋セメントでの処理を計画し、各自治体に依頼中です。日高市の埼玉工場で処理を行うことについても日高市に受入れを打診し、議会での説明も行われました。
 議会での県の説明会は、全員協議会での説明ということです。議会は全員協議会の公開をその直前に決定しており、この説明会もその対象となるということで公開としました。これは、太平洋セメントがある他の自治体の議会がすべて非公開での説明を行った中での日高市議会の方針であり、そこに一つのニュースバリューがあったと思います。
 そもそも、重要政策の具体的な方針や進捗を市長部局が説明・報告する全員協議会を公開していない議会は、全国に沢山あります。だから全員協議会の公開が、議会公開の一つの尺度になります。市民に聞かれて困ることは何もないのに秘密とする。地方議会はその程度なんだと、批判が大きくなったのが昨今の状況で、呆れてしまった市民が、いま流行りの“おれについてこい”政治の甘い誘惑に乗ってしまいつつあります。
 話が少しずれてしまいました。
 私は、県説明会の公開の意味はきわめて大きかったと思っています。今どき公開が何だということになるかもしれませんが、小さいながらもそのインパクトは今後の可能性を示唆しています。改めて実感しました。傍聴に来た人は少ないかもしれませんが、点から線へ線から面への広がりの兆しを感じます。震災がれきの処理というナーバスな問題に対することもさることながら議会や市政に対する関心も、ということです。
 文化新聞のことに戻って言えば、説明会のことは2回1面トップで報じられました。ニュース価値からしてこれは当然と言えます。しかし、そのニュースも、あれだけの豊富な情報量で報じられたのは、全員協議会の公開があったからです。記事の中に、「公開」という言葉は入っていません。県の説明のみに終始した内容で、市民の声も入っていません。
 また家庭排水の合併浄化槽の説明会が開かれることが報じられましたが、これは日高市の環境課が処理対策の浸透を目指しての“草の根作戦”を本格的に開始したということで、ニュースバリューとしては大きいと思います。この発端となったのは、議会で2回にわたってこの問題の重要性を指摘したことを契機としています。
 往々にして有り勝ちなのですが、また今までも散見されましたが、行政の発表記事だけを元にして書いた記事には違和感を覚えることもあります。やはり新聞には、事実としての議会の行動や主張があれば、それを踏まえて書いてほしい。市民の批判、反応もあれば書いてほしい。
 市民と議会と行政の活発なやり取りを通じて地域は面白くなり、そこにメディアとしての新聞の役割は大きい。購読部数は大したことはなくても、これしかない文化新聞です。特に気が付いた記事があったので注文はつけましたが、大いに頑張ってほしい気持ちからです。
 朝・毎・読の全国紙の覇権争いが届かない地域では、日本各地の小都市で地域新聞は頑張っています。輪転機でカラー刷りを行い、経営もうまくいっている例も多いと聞きます。大都市周辺でも購読地域新聞の可能性は大いにありと私は考えています。