異常、「こんなことは初めてだ」

 今年はいろいろな異常が出ました。猛暑で一等米は少なく、米農家の収入が減ったことが報じられていました。有機農家も例外ではありません。この原因は暑さや虫の発生でモミの生育が損なわれたことです。師匠の米も暑さで稲が疲れたためか米粒が小さいとのこと。

 これは隣の田んぼの様子です。この田んぼは、日高で―、ニを争う早い収穫のところで、9月中旬には刈り終わっています。二番穂が出ています。師匠の田んぼも同じで、こんなことは初めてだと言ってました。これも、明らかに気温が高いからで温暖化の現象と言えます。
 「こんなことは初めてだ」がいろいろな場所で、いろいろな現象で起こっています。私の場合、新しく借りた田んぼで葉を食う虫が大発生しましたが、そのままに放置しておいたら影響はなかったようです。何年か前、この近くで植林用のスギやヒノキを大量に育てている人が、何か変わってきている、おかしい、と言っていたことが思い出されます。
 昨年からの現象であるヒエが少なくなったこと、これも原因は分かりませんが、影響かもしれません。その代わりに新しい、というか、今までもあったが少なくて目立たなかったものが突如、溢れるように出現したのが、昨日書いたホソバヒメミソハギです。
 記憶で書いていたので、もう一度よく確かめてみようと現物を採ってきて図鑑で確認しました。間違いなさそうです。

 国立環境研究所によると、ホソバヒメミソハギアメリカ原産の帰化植物で1952年佐世保で発見され、現在、関東付近まで侵入し、さらに東進中とのこと。侵入地図を見ると、埼玉県は侵入最前線になるので、私の田んぼでの今年の一面化は、まさにじりじりと広がる現象の一断面だったわけです。温暖化でこの東進はさらに早まるでしょう。
(国立環境研究所『侵入生物データベース』より)。グリーンのところが侵入地。
 侵入DBに、田を生育地とするので稲と競合する、とありますが、無農薬稲作にとってはコナギとヒエに加わった新しい敵かもしれません。この強力繁茂状況を見ると、在来の水生植物は駆逐されてしまうのではないかと思います。
 「水田が耕作されている間は、ホソバヒメミソハギは畦脇に点々と生育している程度であるが、場所によっては一面を覆ってしまうほど繁茂している休耕田がある。除草剤の散布の時期や種類、前年の植生などが影響しているのであろう。帰化植物が休耕田の全面を覆っている景観は、不気味である」(岡山理科大学 総合情報学部 生物地球システム学科植物生態研究室(波田研)のホームページより)
 小川町のプロ有機農家の友人から電話がありました。小川では無農薬畑で虫が大発生して、サツマイモやニンジンなどの葉が完全に食い尽くされてしまうことが多発していると言う。そちらはどうかとのこと。
 この虫はハスモンヨトウのことらしい。こいつはサツマイモの葉を一晩でくってしまうほどすごく、その音はザワザワと風が吹く音のようだと、どこかで読んだ記憶があります。小川もこのヨトウの仕業に違いない。以前から私の畑にもヨトウはたくさんいることに気づいていましたが、悪さはしないので特に気にはかけていませんでした。
 以前、茨城に行ったときのことです。盛んなサツマイモ栽培地ですから一面のサツマ畑です。そこに長いホースを引き込んで殺虫剤を撒いているのをあちこちで見かけました。これがハスモンヨトウ退治だったのです。
 友人は言います。「こんなことは初めてなんで、自分のやり方がいいのかどうか」。友人は直接は虫にやられてはいないが、仲間のあまりの惨状に考えてしまった、と言います。
 そして私の畑を見せてくれと。全く虫のことを気にかけていないこと、自然農業を今まで吹聴してきたことから関心を持ったようです。私は「プロの無農薬農家にお見せするほどのものではない」と言いましたが、近々来るそうです。
 草の世界でも、虫の世界でも、温暖化による侵食は秘かに進みつつあるようです。これを退治するため、新たな除草剤、殺虫剤が開発され散布していけばどうなるのか……。